堀田の水

中川根のむかし話

むかしむかし、堀田山の麓に弥冶衛門という農鍛冶が住んでいました。弥冶衛門の屋敷の裏には「堀田の水」と呼ばれる湧水がありました。
弥治衛門の打つ刃物は強く、良く切れました。ときおり百姓たちから守刀にと頼まれて打った刀もまた、みごとなできばえでした。彼は百姓たちの喜ぶ顔がうれしく、それが彼の生きがいでありました。
そのような、弥治衛門の近郷にも聞こえるほどの名声は、無双連山に本城を堀の内に館をもつ、領主土岐山城守の耳に入らぬはずはありませんでした。平和で静かな弥治衛門の日々のあけくれに、「刀剣一振り、年改まりて、ひと月のうちに作り納めよ。」という領主からの命が来ます。この領主の命令は、弥治衛門の心に大きな波紋を投げかけました。断ってみてもかなわぬことで、弥冶衛門には、とつぜんの厳しくもむごい命令でありました。悪く作ればなおのこと、たとえみごとに作ったとして・・・弥冶衛門は、身内にしのびよる不安を思わないではいられませんでした。
長い葛藤の末、弥冶衛門は刀を打つ決心を固めました。年も明けて正月、弥冶衛門は初日の出に祈りました。そして堀田の水を汲んで、ひさしぶりに鍛冶場に入りました。
鍛冶場は新作によって清められ、何もかもがすっきり整っていました。弥冶衛門は白装束に身を固め、烏帽子もきりきりと一点を見すえる目は、異様にかがやいていました。向こうの槌は、おいの新作がとりました。
夜を日についで、打ち鍛えることひと月、一振りの刀に生命がふきこまれました。その精魂込めて打ち上げた刀身をかざして、弥冶衛門はほほえみました。わが仕事は終わった、と大事を成し終えた弥冶衛門は、それからの日々を身にしみる山の寒さと葉を落としつくした真冬の林の中の社に身を置いて、ひとり座り続けました。
心は安らいでいました。不思議なほどに晴れ晴れとした安らぎでした。二人の覆面の刺客が刀を抜いて忍びよって来るのにも、何のおそれも感じませんでした。弥冶衛門にこの日が来ることの不安は、とうのむかしに消えていました。弥冶衛門は、自分の生命が冬の林の静寂にとけこんでくるような安らぎを感じ、その目を閉じました。
城主の土岐山城守の命を受けた刺客たちは弥冶衛門を斬ったその血刀を、堀田の水で洗いました。すると水はみるみるまっ赤に染まり、そのまっ赤に染まった堀田の水は、落ち葉も林の土もまっ赤に染めました。
それからというもの、ずっと堀田の水は赤く、その水を飲んだ村の衆も腹痛を起こして人々から恐れられました。

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詳細

地域 川根本町
時期 1月 / 2月 / 3月 / 4月 / 5月 / 6月 / 7月 / 8月 / 9月 / 10月 / 11月 / 12月
URLhttp://www.edu.pref.shizuoka.jp/kawane-h/home.nsf/IndexFormView?OpenView
URL(静岡県立川根高等学校ホームページ「夢ぷろ」をご覧ください。)

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